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山口 憲司
シリサイド系半導体の科学と技術, p.113 - 121, 2014/09
本稿は、イオンビームと固体との相互作用に起因するスパッタリング現象について概説したのち、これを薄膜創製に応用したイオンビームスパッタ蒸着法の説明をしている。さらに、イオンビームスパッタ蒸着装置に基板表面処理用のイオン照射系を備えた実験装置の構成例を示したうえで、本手法によってシリコン基板上に作製された鉄シリサイド半導体薄膜の特徴を解説した。実験結果が示すところでは、薄膜は基板に対して高配向した連続膜であり、しかも、基板との間に非常に鮮明な界面を形成することも分かった。
山口 憲司; 志村 憲一郎; 鵜殿 治彦*; 笹瀬 雅人*; 山本 博之; 社本 真一; 北條 喜一
Thin Solid Films, 508(1-2), p.367 - 370, 2006/06
被引用回数:12 パーセンタイル:49.71(Materials Science, Multidisciplinary)成膜後の加熱処理が-FeSi薄膜からの発光(PL)特性に与える影響をより詳細に調べるために、作製した薄膜試料をさまざまなアニール条件で処理した。試料の作製はイオンビームスパッタ蒸着(IBSD)法もしくは分子線エピタキシー(MBE)法によった。いずれの製法でも、蒸着速度は0.5nm minとほぼ同程度で、膜厚は50-100nmであった。また、PL測定は1100-1700nmの波長範囲で行った。測定の結果、最も強いPL強度を示すのは、IBSD法で作製した試料を1153Kにて10Pa程度の真空中でアニールした場合であることがわかった。この場合、測定温度150K以下では、温度が増加してもPL強度はさほど減少しない。しかし、150K以上になると、温度の増加とともに急激に減少するとともに、ピーク位置も低エネルギー側へシフトすることがわかった。一方、超高真空(10Pa)下でアニールをした場合、アニールによりPL強度は著しく減少した。さらに、透過型電子顕微鏡による断面組織観察によって、高温での真空アニールによりシリサイド膜は数10nm程度の粒状となり、周囲をSiにより取り囲まれてしまうこともわかった。MBE法により成膜した鉄シリサイド膜についてもPL特性を調べたが、概して強度は弱く、また、アニールによる強度の増加もごくわずかであった。
志村 憲一郎; 山口 憲司; 笹瀬 雅人*; 山本 博之; 社本 真一; 北條 喜一
Vacuum, 80(7), p.719 - 722, 2006/05
被引用回数:9 パーセンタイル:34.33(Materials Science, Multidisciplinary)イオンビームスパッタ蒸着(IBSD)法により作製した-FeSi薄膜の発光特性に及ぼす、-FeSiの構造や表面組成の影響を調べた。本手法により、あらかじめNeイオンによりスパッタ洗浄したSi(100)表面上にFeを蒸着させることにより、973Kにて高配向性の-FeSi薄膜を作製した。用いた基板はSi(100)単結晶基板、及び、酸化物絶縁層上に100nm程度のSi(100)層を有するSIMOXと称する基板である。発光測定は、6-300Kの温度範囲で行った。いずれの基板上の-FeSiも6-50Kで0.83eV付近に鮮明な発光ピークを有し、その強度もほぼ同程度であった。しかし、Si(100)基板上に作製した-FeSi薄膜は、1153K,真空中(10Torr)でのアニールにより発光強度が劇的に増加したのに対し、SIMOX上で成膜した薄膜の発光強度は、アニールにより逆に減少した。いずれの薄膜もアニールにより大きくその構造が大きく変貌することが透過型電子顕微鏡による断面組織観察により明らかになった。さらに、X線光電子分光法による組成分析によると、SIMOX基板の場合にはシリサイド層直下の酸化物層から酸素が侵入することもわかった。こうした構造上、組成上の変化が観測された発光特性の変化と深く関係していると思われる。
山本 博之; 山口 憲司; 北條 喜一
Thin Solid Films, 461(1), p.99 - 105, 2004/08
被引用回数:10 パーセンタイル:46.84(Materials Science, Multidisciplinary)ベータ鉄シリサイド薄膜作製においては、Fe, Si原子の相互拡散及び反応が最も基礎的なプロセスとなる。このため、配向性の高い薄膜や、良好な物性を得るためにはナノ領域における構造,組成の観測と同時にその制御が不可欠である。本発表においては、種々の方法,作製条件により得られた鉄シリサイド薄膜に関して透過型電子顕微鏡,放射光を用いたX線光電子分光法を応用し、その形成過程を明らかにした成果を報告する。併せて、Si基板表面にイオンを照射し意図的に欠陥を生成させることによってより低温で膜生成を促進させた結果、Fe原子がSi基板中に拡散し、シリサイド化する様子を温度変化させながらその場観察した結果など、従来まで演者らの研究により得られた成果についても総括的に発表する。なお、本発表はIUMRS国際会議におけるシリサイド系半導体のセッションでの招待講演である。
原口 雅晴*; 山本 博之; 山口 憲司; 仲野谷 孝充; 斉藤 健; 笹瀬 雅人*; 北條 喜一
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 206, p.313 - 316, 2003/05
被引用回数:17 パーセンタイル:72.74(Instruments & Instrumentation)環境半導体,-FeSiは環境に配慮した元素から構成され、受発光素子・熱電変換素子などへの応用が期待される材料である。本研究ではSi基板の表面処理法が成膜した-FeSiの結晶性に及ぼす影響を検討することを目的として、高温加熱処理,スパッタ処理,化学処理の3種の異なる方法で処理した基板を用いてそれぞれFeをスパッタ蒸着し成膜を試みた。得られたX線回折スペクトルから、高温加熱処理した基板を用いた場合は成膜温度973Kにおいて相ではあるものの種々の結晶方位が混在する膜となった。一方スパッタ処理,化学処理による基板の場合ではいずれも比較的良好な結晶性を持つ-FeSi膜が得られた。透過型電子顕微鏡による薄膜断面の像からもそれぞれの基板処理法によって基板表面の構造とともに膜の結晶性が変化することを示すとともに、簡易な処理法であるスパッタ処理においても結晶性が良好であることを明らかにすることができた。なおホール効果測定によるキャリア密度との関係についても併せて議論を行った。
山口 憲司; 山本 博之; 北條 喜一; 鵜殿 治彦*
JAERI-Conf 2002-014, 60 Pages, 2003/01
シリサイド系化合物は、環境に負荷を与えない新しい半導体材料として内外で注目を集めている。本研究会は、平成14年8月5,6日の両日、原研東海研究所の先端基礎研究交流棟大会議室において開催された。1件の招待講演を皮切りに、10件の口頭発表と20件のポスターによる発表が行われ、2日間延べ約140名に及ぶ出席者により活発な討論を行いつつ盛況のうちに全日程を終了した。本編はその報告書である。
部家 彰*; 原口 雅晴*; 山本 博之; 齊藤 健*; 山口 憲司; 北條 喜一
石川県工業試験場平成14年度研究報告, (52), p.9 - 12, 2003/00
環境半導体である鉄シリサイド(-FeSi)をイオンビームスパッタ蒸着(IBSD)法により生成した。ターゲットにFeSiを用い、FeSi蒸着膜厚を変化させたときのFeSi膜の結晶構造及びSi, Fe濃度分布の変化から、成長機構を検討した。その結果、FeSi蒸着量によりFeSi膜の結晶構造が異なり、それはFeに対するSiの供給量に依存すること、また、FeSiターゲットを用いることにより、膜厚100nm程度の(100)優先配向性の-FeSi膜が生成できることを示した。
原口 雅晴; 山本 博之; 山口 憲司; 笹瀬 雅人*; 仲野谷 孝充; 斉藤 健; 北條 喜一
真空, 45(10), p.749 - 753, 2002/10
環境半導体,-FeSiは人体への悪影響が少なく、資源も豊富に存在する元素からなる環境に配慮した材料であり、受発光素子・熱電変換素子などへの応用が期待されている。本研究ではSi基板の表面処理法が成膜した-FeSiの結晶性に及ぼす影響を検討することを目的として、高温加熱処理,スパッタ処理,化学処理の3種の異なる方法で処理した基板を用いてそれぞれFeをスパッタ蒸着し成膜を試みた。得られたX線回折スペクトルから、高温加熱処理した基板を用いた場合は成膜温度973Kにおいて相ではあるものの種々の結晶方位が混在する膜となった。一方スパッタ処理,化学処理による基板の場合ではいずれも比較的良好な結晶性を持つ-FeSi膜が得られた。スパッタ処理法は簡易ではあるが表面に欠陥が残ることが予想される。この処理法によって原子レベルで平滑な表面が得られる化学処理と同等以上の膜が得られたことは、基板表面における拡散・反応過程が重要な過程となる本成膜法では欠陥の存在がFe-Si相互拡散を促進させ、薄膜形成に有利に働いたことを示している。
斉藤 健; 山本 博之; 笹瀬 雅人*; 仲野谷 孝充; 山口 憲司; 原口 雅晴*; 北條 喜一
Thin Solid Films, 415(1-2), p.138 - 142, 2002/08
被引用回数:20 パーセンタイル:67.09(Materials Science, Multidisciplinary)イオンビームスパッタ蒸着法を用いて「環境半導体」-FeSi薄膜をSi(100)基板上に作製した。この過程において、生成したFeSi薄膜がSiや他の化合物半導体に比べ大気中においても極めて安定で、強い耐酸化性を有していることを見いだした。この原因を明らかにするために、当研究グループにおいて開発した放射光-光電子分光法による非破壊深さ分析法を用い、薄膜の表面化学状態及び組成について検討した。この結果、FeSi薄膜(厚さ100nm)表面に0.7nm程度と考えられる極めて薄いSiO層が生成していることを明らかにした。このSiO層はFeSi上に均一に成長しており、3ヶ月間大気中に放置した後においてもほとんど変化が見られない。熱化学的評価からFeSi自体は大気中で室温においても酸化が進むと考えられる。このため生成したFeSi薄膜が安定であることは最表面の均一なSiO層が耐酸化性に寄与していると考えられる。
仲野谷 孝充; 笹瀬 雅人*; 山本 博之; 斉藤 健; 北條 喜一
真空, 45(1), p.26 - 31, 2002/01
イオンビームスパッタリング法を用いて、次世代化合物半導体として期待の高い-FeSiのエピタキシャル成長薄膜の作製を試みた。最適な作製条件を決定するため、Fe蒸着中のSi基板の温度及び、蒸着するFeの量を変化させて実験を行った。形成されたシリサイド薄膜の結晶性と表面の形状はそれぞれ、X線回折法と走査型電子顕微鏡にて評価した。結果、Fe蒸着量33mn,Si基板温度700で-FeSiのエピタキシャル性の良好な薄膜作製に成功した。一方、700以上では高温相である-FeSiが形成され、温度の上昇に伴い増加した。さらに基板温度を固定して蒸着量を変化させた実験から、相の生成は基板温度だけでなく、Feの蒸着量にも大きく依存することを明らかにした。
笹瀬 雅人*; 仲野谷 孝充; 山本 博之; 北條 喜一
Thin Solid Films, 401(1-2), p.73 - 76, 2001/12
被引用回数:32 パーセンタイル:80.45(Materials Science, Multidisciplinary)近年、地球上に豊富に存在し、かつ生体に対し毒性の少ない元素から構成される半導体、いわゆる「環境半導体」と呼ばれる材料の作成が試みられている。これらの中でFeとSiから構成される-FeSiは優れた受発光特性や熱電変換特性を示すことから非常に有力な候補として注目されている。われわれはイオンビームスパッタ蒸着法によりSi基板上への-FeSi薄膜のエピタキシャル成長を試みた。特に、-FeSi薄膜の生成及び結晶性に最も大きな影響を与えると考えられるSiの基板温度とFeの蒸着条件を変化させ、生成した薄膜の構造についてX線回折法及び走査型電子顕微鏡を用いて検討した。これらの結果から、本報において基板温度700で最も良好な-FeSiが得られることを明らかにした。同時にFe蒸着条件によっては相よりも高温で生成する相が基板温度600でも明らかに確認された。これは従来法より低温で相のエピタキシャル成長が可能であることを示唆するものであると考えられる。
斉藤 健; 山本 博之; 北條 喜一; 松林 信行*; 今村 元泰*; 島田 広道*
Photon Factory Activity Report 2000, P. 82, 2000/00
放射光を用いたX線光電子分光法(SR-XPS)により-FeSi生成条件の最適化を行うことを目的としてその生成過程について検討した。実験は高エネルギー加速器研究機構,放射光研究施設,BL-13Cにて行った。Si(111)基板表面に超高真空中でFeを2nm蒸着した後、473973Kの範囲でそれぞれ15分加熱した。各試料について、内殻軌道のスペクトルからFe/Si組成比の深さ方向分布を、価電子スペクトルから物性評価を行った。内殻軌道の強度比を評価することによりFe-Si相互拡散過程の定量的な解析を可能とした。さらに価電子スペクトルからの673K以上で-FeSiの生成が始まることを明らかにした。